・「Adoration」 美人だが、とにかく無愛想で協調性に欠けると不評の倉田智恵は、本社から地方局に左遷されてきたという噂だ。 彼女が配置され数ヵ月経ったある日、部内の重要な連絡が彼女だけに伝えられず、通常なら起こりえないミスが起きた。 その問題が片付いた深夜、上司の白井は彼女をフォローしようと声を掛けるも、かえってその優しさが、それまで張りつめていた智恵の緊張の糸を切り、少女のように泣かせてしまうのだった。 それがきっかけで歳の離れたふたりは関係を持つ。 男と女が互いを望み、肌を寄せ合い、感じ合う姿に、歳の差は関係なかった。 ・「僕の知らない母」 何気なく購入したAVを再生すると、画面にまさかと思う、母親の若い頃の姿があった。 母子家庭での二人暮らし、父が居なくなった本当の事情は今も知らない。 走馬灯のように、母と男たちの淫らな映像と、その頃、母と過ごしていた幼少期の思い出が交錯した。 画面に映る母の姿は、自分が知っている母とは違っていたが、軽蔑することはなかった。 謝ることなんかない。 母さんの前ではいい息子でいるから。 これからは……。